チルドレン・センター

ABA(応用行動分析学)で自閉症を療育

ABA(応用行動分析学)について

ABAとは(応用行動分析学) とは

応用行動分析学(ABA: Applied Behavior Analysis)とは、行動分析学の一部です。ABA (読み方:エービーエー)は、行動の科学であり、行動の原則を理解し、それを応用して社会や生活の問題を解決する方法を提供するものです。 ABAは、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療や教育に広く利用されていますが、その応用範囲は広く、様々な行動の改善に役立てられています。

ABAとは何?

ABAは人の行動を改善するための介入を実践していきます。そして、その介入案が正しかったのかどうかを立証するためにデータを取っていきます。

A(先行条件):行動が起きる前に何が起きているのか

B(行動):どんな行動が起きているのか

C(後続条件):行動が起きた後に、誰が何をすることが起きているのか 

子どもの行動を例として挙げます。

「おもちゃを投げる3歳児」

1. A(先行条件):パパが携帯をいじっていて、子どもは何も遊ぶものがない。

2. B(行動):子どもが自分のおもちゃをパパに投げた

3. C(後続条件):パパが「だめじゃないかー!」と顔をあげ、携帯をおいて叱る。

4. 結果:子どものおもちゃを投げる行動が減る

この場合、叱って投げる行動が減っていれば大きな問題ではありません。

しかし、問題は下記のような場合です。

1. A(先行条件):パパが携帯をいじっていて、子どもは何も遊ぶものがない。

2. B(行動):子どもが自分のおもちゃをパパに投げた。

3. C(後続条件):パパが「だめじゃないかー!」と顔をあげ、携帯をおいて叱る。

4. 結果:子どもが、またおもちゃを投げる

1〜3までは大きな問題がない場合と同じですが、4の結果が繰り返してしまう場合、「気になる行動」「言葉を理解していない」「指示がはいらない」「わかっていない」などとして「問題行動」と指摘されてしまいます。

この場合、ABAでは聞き取りや実際の場面を見ていきます。(できれば、回数も数えます)

  1. 投げる前になにがおきているのか、また何を投げるのか
  2. 投げた後に何がおきているのか (投げた後の保護者と本児の行動)

その上で、投げる前に保護者が注意すること投げた後に保護者がすることを分析(機能分析)からの介入の提案、実施で問題行動が減るのか増えるのかを見ていきます。

この例では、子どもの行動を例として挙げましたが、実際はABAは多くの分野で用いられています。

ABAの基本な実践内容

行動の観察と記録

行動を細かく観察し、記録することから始まります。これによりどのような行動が問題となっているのか、またその原因やきっかけが何であるかを特定します。

強化と弱化

強化:望ましい行動を強化(報酬を与えることでその行動の将来の頻度を増やす)
例えば、おなかの減っている子どもが「バナナ」といって、すぐに「バナナ」が与えられて美味しく食べられれば、将来的に「バナナ」という回数が増えることが期待できます。

弱化:望ましくない行動を弱化(ネガティブな結果を与えることでその行動の頻度を減らす)
ABAの専門家は、「倫理コード」があるので、実際は弱化の指導は基本的に行いません。
例えば、 騒がしいクラスに怖い先生が入ってくるとクラスがシーンとします。でも、授業が終わり先生がクラスから去れば、また生徒たちは騒がしくなります。

環境の調整

行動に影響を与える環境要因を変更することで、行動を変えることができます。環境の調整を、「気になる行動(問題行動)」の前に実践しておけば、行動が起きる機会を下げることができる可能性があります。
例えば、プリントを与えられても実践しない児童には、プロンプトを与える前に、 筆箱にきちんと削られた鉛筆を揃え、机上を整理するなどの学習環境を整えることで、プリントを実践する機会があがる可能性があります。

逐次的な教示法(シェーピング)

スキル習得の場合、複雑な行動を学習させるために、段階的に目標行動に近づける方法です。小さな成功を積み重ねていくことで、最終的に目標とする行動を達成させます。

療育として使われる際のABA

米国ではASDの診断が下りると、現在ほぼすべての州で、BCBA(認定行動分析士)がABAの計画と実践をすることが可能です。そのほかの海外諸国でもABAを療育、とくにASDの診断がある、または問題行動のある子どもに対してABAを用いて療育をするケースが増加しています。

療育としては、どんなことをするの?

ケースと問題行動にもよりますが、ABAを用いて1対1で指導することもあれば、集団で指導をすることもあります。ABAを実践している専門家は、「7つの要素」を基準にして対象の方のアセスメントを実施してプログラムを作成します。また、ABAとその他の心理療法やプレイセラピーとの違いは様々です。
例えば、「対象児を説得してから実践するのではない」ということもその一つです。ABAの指導者は環境を調整して指導を実践してきます。ABAで実践している指導者からの「シャボン玉して遊ぼうか」などの声掛けは、適当に行なっているのではありません。その問いかけに関して、対象の子どもがどんな行動をするのか、それが目標行動なのか、違う行動であるのか、介入方法が合っているのかなど、すべてにデータを取っていきます。

ABAの7つの要素

応用(Applied)
ABAを受ける人にとって、社会的に意味のある重要な行動を目標にしているか。また、社会的妥当性のある介入が計画されているか。


行動(Behavioral)
介入の有効性が実証できるように、改善すべき行動が測定可能に定義されているのか。


分析(Analytic)
行動とその行動が起きる環境との関係性が存在することが実証できているのか
(例:行動機能分析の実施)。またシングルケース研究法などを用いて、介入の有効性を実証できているか。


技術としての確立(Technological)
再現性を保証できるような明確な手続きの記述であるかどうか。指導者が変わっても、同じ介入ができない定義の記述では、技術的であるとは言えない。


概念体系(Conceptually Systems)
応用行動分析学の基本的原理に基づいて介入が計画されているか。


有効性(Effective)
実際の介入が社会的に意味のあるレベルで行動変容を起こしたか。指導の中で出来たとしても、指導外での般化、または周りの人がその行動に変化を感じることができなければ有効性は認められない。


一般性(Generality)
介入計画に、般化訓練が含まれているか。習得した目標行動を指導者がイアない場面や指導環境以外でも発揮することができているのか。また。指導が終了した後でも行動の変化が維持されなければならない。


どれぐらい続けて指導を受けるの?

ABAの指導は、「目標が達成するまで」指導を受けることが望ましいです。ただ「目標の達成」は、回数を重ね何度も練習するということではありません。ABAの指導では、必ずデータを取ります。そのデータを見ながら、介入が適しているのかどうかを分析していきます。
例えば、ASDのためのABAの場合、話せるようになれば終わりというわけではありません。問題行動の軽減を必要とする場合もあれば、口頭で話すスキルに困難がある場合は、その他のコミュニケーション手段を使うことも検討していきます。

誰がするの?

海外では、協会認定行動分析士®(BCBA®)という資格をもっている者、米国で州の行動分析士としてのライセンスを保持している者がプログラムを作成し、それを登録行動テクニシャン®(RBT®)という資格を保持する専門家が実践する、というのが通常のABAの指導の流れです。保護者やその子どもに関わる先生方などの大人たちにも、「ペアレントトレーニング」という形で実践をしていきます。

ABAは、B.F.スキナーの研究により科学として確立された行動分析学の一部の領域として、世界中で研究をされています。

コラム:ABAの専門家の存在 (英語)  https://www.bacb.com/bcba/

ABAのことをもう少し詳しく

ABAの定義は、「行動原理から導き出された原理や方法を、社会的に重要な行動の改善のために 組織的に応用して人間の行動を改善し理解する科学」(Cooper, Heron, & Heward, 2020) となっています。つまり、「ABAは科学を使って人の行動、特に社会的に重要な行動を改善する」のが目的です。 ABAは科学的根拠に基づいており、その効果が多くの研究で実証されています。具体的な手法や技術は、個々のケースに応じて柔軟に適用されるため、非常に実践的かつ応用範囲の広い学問分野です。

チルドレン・センター

ABA(Applied Behavior Analysis:応用行動分析学)を基盤に指導者が自閉症児を療育するエージェンシーです。

指導者

チルドレン・センターの指導者たちは、博士をはじめとしてABAの国際資格を持っています。​ 国際資格である協会認定行動分析士-博士®(BCBA―D)、協会認定行動分析士®(BCBA)、協会認定準行動分析士® (BCaBA)、そして登録行動テクニシャン®(RBT)がご指導を実施します。​

入会方法

チルドレン・センターでの指導だけではなく、ご家庭でもできることがあればという視点からお話しさせて頂きます。