発達障害や教育現場で注目されるACTとは?マインドフルネスとの違いや支援効果を解説

発達障害や教育現場で注目されるACTとは?マインドフルネスとの違いや支援効果を解説

もし、「苦痛をなくす」ことではなく、「苦痛とうまく付き合う」ことを目的とする心理療法があるとしたら、どのように感じるでしょうか?

ACT(アクセプタンス&コミットメント・トレーニング)は、近年注目を集めている「第三世代の認知行動療法」に分類される心理的アプローチです。マインドフルネスの概念を基盤としながら、苦痛やストレスを回避せずに受け入れ(アクセプタンス)、自分の価値観に沿って行動を選択する力(コミットメント)を育むことを目的としています。

不安障害、うつ病、強迫性障害といった精神的課題だけでなく、発達障害や自閉スペクトラム症(ASD)など様々な分野において、研究が進みその効果が科学的に実証されており、注目を集めています。

特に、従来のマインドフルネスと比較して、ACTは「行動の変容」に重きを置いている点が大きな特徴です。体験的なエクササイズや比喩表現を通じて、実生活での実践を支援します。

目次

マインドフルネスとACT(アクセプタンス&コミットメント・トレーニング)の比較表(関係性と臨床的活用)

項目マインドフルネスACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)
基本概念「今この瞬間」に気づきを向け、判断せずに受け入れる心の在り方マインドフルネスを含む6つのプロセスにより、心理的柔軟性を高め、価値に沿った行動を促進する行動療法
目的気づきと受容によるストレス軽減・感情調整不快な思考や感情に支配されず、価値に基づいた行動を選択する力(心理的柔軟性)の向上を目指す
中心的な実践瞑想、呼吸への集中、観察など日常での注意訓練クライアントに合わせた比喩・ワーク・体験的エクササイズを用いながら、6つのプロセス(特にマインドフルネス関連4つ)を練習
関係性の位置づけACTの構成要素の一部として含まれるマインドフルネスを4つのスキルに細分化し、個別的・臨床的に応用
マインドフルネスに相当するACT内の
4プロセス
①「今この瞬間に接する」
②「自己という文脈」
③「受容」
④「脱フュージョン」
マインドフルネスとACT(アクセプタンス&コミットメント・トレーニング)の比較表(関係性と臨床的活用)

米国ではACT(アクセプタンス&コミットメント・トレーニング)の教育現場への導入が進んでおり、特別支援学級で発達障害のある生徒を対象に個別に取り入れられるケースもあれば、通常学級でクラス全体を対象に実施される事例もあります。導入の形態は様々で、ニーズや教育現場の状況に応じて柔軟に対応されています。

ACT(アクセプタンス&コミットメント・トレーニング)導入により期待されている主な効果

分類具体的効果対象と場面
感情調整の支援怒り・不安・緊張などの感情に巻き込まれず、自分の行動を選ぶ力が育つ自閉スペクトラム症(ASD)やADHDの児童・生徒
学業への集中力向上注意の持続、学業に向かう姿勢の改善通常学級全体
社会性・関係性の向上対人トラブルへの反応や自他への理解が深まるいじめ対策や偏見へ対策
問題行動の予防回避・拒否・逸脱的行動を減らし、建設的な行動へ置き換え発達障害児の個別指導
教員のストレス緩和教職員自身もACTスキルを学ぶことで、バーンアウトや感情反応をコントロールしやすくなる教員研修やスクールカウンセラー向け研修としても導入
ACT導入により期待されている主な効果

参考文献
Paliliunas, D., Burke, R. V., Taylor, S. L., Frizell, C. B., Durbin, K. K., & Hutchings, D. L. (2022). Evaluating an ACT-Based Brief Intervention for Educators Treatment Package on Reported Well-Being and ACT-Consistent Language in the Classroom. Behavior Analysis in Practice16(1), 156–171.
https://doi.org/10.1007/s40617-022-00707-7

チルドレン・センターでは、個別指導におけるACT(アクセプタンス&コミットメント・トレーニング)の実践に加え、東京都内の公立小学校と連携し、教育現場へのACT導入にも取り組んでいます。特に昨年度は、発達障害をもつ児童・生徒を対象とした個別支援に加え、現場で活躍されている教職員向けにACTのワークショップを実施しました。これらの活動は、教員研修の一環として行われ、多くの先生方にACTの考え方やスキルを体験していただく機会となりました。

日々のセルフケアとしてマインドフルネスのエクササイズに取り組み、ACTの実践を積極的に行ってくださった先生方に心より感謝申し上げます。教員研修の機会を通じてこのような貴重な取り組みに携われたことに、改めて御礼申し上げます。

ACTもABAの他の手法と同様に日々進化していきます。今後さらに研究や実践を積んでいき、今年もより効果的なACTの実践を目指していきたいと思います。

ACT(アクセプタンス&コミットメント・トレーニング)は、ABA(応用行動分析学)の他のアプローチと同様に、科学的根拠に基づいて日々進化しています。今後も引き続き、実践と研究の両面から取り組みを深め、より効果的かつ実用的なACTの支援法を追求してまいります。

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