冬休みがちょっと不安な保護者の方へ|発達の気になる子どもと安心して過ごすヒント

冬休みがちょっと不安な保護者の方へ|発達の気になる子どもと安心して過ごすヒント

こんにちは。チルドレン・センターです。そろそろ街中では、子どもたちが2学期に一生けんめい作った作品を、少し誇らしそうにお手提げ袋に入れて持ち帰る季節になりました。

冬休みは、学校や習い事がお休みになり、家族で過ごす時間が増える、少し特別な季節ですね。私たちABAの指導者にとっては、実はこの時期は、少しだけ「祈り」の季節でもあります。

「どうか、ご自宅や親せきのお家で、大きな困りごとが起きませんように」
「けがや体調不良なく、楽しく過ごせますように」

日常とは違うリズム、いつもと違う出来事がたくさん起こるこの季節を、

ぜひ、思いきり楽しんでほしい――

そう心から願う一方で、思いがけず出てしまった行動によって、ご家族も、そして何よりもそのお子さん自身が「どよーん…」とした気持ちになってしまわないといいな、そんな思いも同時にあります。

ABAは科学に基づいた支援ですが、新しい環境や初めての出来事が増えやすいこの時期は(それ自体はとても良いことです)、
正直なところ、「何も起きませんように」と願う気持ちも大切にしています。

今日は、そんな冬休みを少しでも安心して、楽しく過ごしていただくために、いくつか小さなお願いとヒントをお伝えします。

目次

気になる行動があっても、すぐに「問題行動」と決めつけないでください

冬休みに入って、インフルエンザなどが一段落するご家庭もあるかもしれませんが、冬は子どもも大人も体調を崩しやすい時期です。

もし、「おや?」と思うような行動が急に見られたときには、まずは体調不良や疲れなど、身体的な理由がないかを思い出してみてください。

発達にでこぼこのある子どもたちも、保護者やご家族と同じように、冬休み特有の慌ただしさや、ちょっとしたドキドキ感を感じています。

また、年末年始は大人も忙しくなりがちで、これまで自然に向けていた「声をかけること」「ほめること」「関わること」が
少し減ってしまうこともあります。

そんなとき、お子さんにこんな様子が見られることがあります。

  • いつもよりイライラしている
  • 同じ質問を何度もする
  • 外出や予定の変更を嫌がる

これを見て、「どうしてだろう」「私の関わり方がよくなかったのかな」と不安になる保護者の方も少なくありません。

まずお伝えしたいのは、それは珍しいことでも、悪いことでもないということです。

「何も決めない」より、「少しだけ決める」

「せっかくのお休みだから、自由にさせてあげたい」「正直、私も少し寝たい…」

そんなお気持ちは、とても自然なものです。

ただ、完全に何も決まっていない状態は、何事にも一生懸命に取り組みやすい発達にでこぼこのある子どもたちにとって、実はあまり“楽”な環境ではないこともあります。

おすすめなのは、ゆるく、やさしいを作ることです。

たとえば、こんなイメージです。

  • 起きる時間と寝る時間は、だいたい同じ
  • 午前中に「やることの時間」を少しだけ
  • 午後は自由に過ごすけれど、ひとりでもできそうな活動を2~3個、心の中で用意しておく

きっちり守れなくても、まったく問題ありません。

「だいたいこんな流れ」があるだけで、子どもたちは楽しめるチャンスがぐっと増えます。

目で見てわかる工夫が、助けになることもあります

「今日は何をするの?」「次はなに?」

こんな質問が増えてきたときは、言葉だけで説明するよりも、目で見てわかる形が助けになることがあります。

  • 今日の予定を紙に書く
  • 絵や簡単なマークを使う
  • 午前・午後だけに分けて伝える

それだけでも、「わからない不安」がぐっと減ることがあります。

「でも、うちの子は言葉がわからなくて……」そんな保護者もいるかもしれません。

それでも、「今日は4時におばあちゃんたちが来るよ」「パパは明日から仕事だからね」など、予定を一言伝えることはとても有効です。

それでも同じ質問が何度も続く場合には、そのときの様子を少し記録してみてください。

そうすると、どんなときにその行動が多いのかが、少しずつ見えてきます。

うまくいかない日は、責めなくて大丈夫です

冬休み中に、泣いたり怒ったり、「今日はちょっと大変だったな…」という日があったとしても、それは甘えているわけでも、成長が後戻りしているわけでもありません。

  • 疲れた
  • 情報が多すぎた
  • どうしたらいいかわからなかった

そんな気持ちが、行動として表れていることもあります。

そんなときは、次のような関わり方を意識してみてください。

  • すぐに叱ろうとしない
  • 落ち着ける時間をつくる
  • 選べるようにする(今やる/あとで)
  • 短く、わかりやすく伝える

それだけで、状況が変わることもたくさんあります。

できたことに、ぜひ目を向けてみてください

冬休みは、小さな「できた」を見つけやすい時期でもあります。

  • 少し待てた
  • 手伝ってくれた
  • 自分から気持ちを伝えられた

大きな成長でなくて、大丈夫です。

「できたね」「助かったよ」

そんな一言が、子どもにとって大きな力になります。

新学期に向けて、少しずつ戻していきましょう

お休みの終わりが近づいてきたら、

  • 起きる時間を少しずつ戻す
  • 学校の話題を、明るく出してみる
  • 短い時間でいいので、机に向かう

無理のない範囲で、ゆっくり準備できれば十分です。

最後に

冬休みは、「うまく過ごさなければならない時間」ではありません。

予定通りにいかない日があっても、少し立ち止まる日があっても、それも大切な冬休みの一部です。

保護者の方が疲れてしまうときは、どうか一人で抱え込まないでください。

子どもも、大人も、安心できることが何よりの土台です。

必要なときに専門家や支援機関に相談することは、とても自然で、前向きな選択です。

この記事を書いた人

松田 幸都枝(まつだ こずえ) 松田 幸都枝
(まつだ こずえ)
チルドレン・センター 代表取締役

認定行動分析士 (博士)(BCBA-D®)
米国ニューヨーク州 行動分析士
Pepperdine大学大学院 准教授


豪州シドニー大学教育学部初等科、特別支援学部卒業後、豪州、イギリス、オランダなどで特別支援および普通学級などで勤務。米国の大学院にて、博士(応用行動分析学)課程を修了。2008年、株式会社チルドレン・センターを設立。全従業員 国際資格保有。チルドレン・センターのスタッフとともに、日本、米国、およびアジア諸国にて、家庭や学校内でのABA指導およびスーパービジョンを務める。2016年より大田区の特別支援アドバイザー就任。2020年よりペッパーダイン大学大学院 心理学部の准教授として指導。著書に「小児科医に知ってほしい応用行動分析学(ABA)について」(小児内科/ 東京医学社) 、Culturally Tailored ABA: Treatments for Asian American Clients and Families. Multiculturalism and Diversity in Applied Behavior Analysis. Bridging Theory and Application (Routledge社) など。

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