ABAセラピスト、やさしい“ビンタ”から学んだこと

子どもの行動には、その子なりの理由があります。
今回は、「静かにしてほしい」という気持ちを、行動ではなく言葉で伝えられるようになるまでの支援についてお伝えします。
“ビンタ”という形で伝えていたこと
ビンタと言っても、お子さんのビンタなので、ぺちっというやさしいタッチです。
あるお子さんが、ABAセラピストに静かにしてほしい時に、言語よりも先に手が出てしまうことがありました。
結果として、“ビンタ”という形でコミュニケーションを取っていたのです。
その行動は、相手を困らせたいからではなく、「静かにしてほしい」という気持ちを伝えるための手段だったのだと思います。
ゲーム中の声かけが負担になっていた
そのお子さんは何も悪くありません。
私がNCR(非随伴強化・Non-Contingent Reinforcement)で前倒しにアテンションを与えていたところ、ゲーム以外の遊びや学習の場面では、そのような行動が見られることはありませんでした。
ただ、ゲームをしている最中は、集中したいお子さんにとって「いいね!」などの声かけがうるさかったため、黙ってほしかったのだと思います。
応援のつもりの声かけが、その場面では負担になっていたのだと気づかされました。
FCTで“言葉で伝える”練習へ
そこで取り入れた介入が、FCT(機能的コミュニケーション訓練・Functional Communication Training)です。
行動が起こる前に、「静かに」「先生、静かにして」といった言語モデリングを先に示したり、「先生が応援の声をかけてもいい?」と事前に確認したりしながら、「言語で伝えたら先生が静かになる」という成功体験を繰り返し練習しました。
まずは行動よりも先に言葉で伝えてもらうために、最長でも3語文でのコミュニケーションを目標にしていました。
言葉で、理由まで伝えてくれた日
そうして約3か月が経ったある日——
理由を含めた言語モデリングは練習していなかったにもかかわらず、そのお子さんは「先生、静かにしててよ。うるさいから」と、自発的に理由まで添えて言葉で伝えてくれたのです。
なんと嬉しいことでしょうか。
やさしい“ビンタ”を身をもって経験したセラピストは、ビンタではなく言葉で伝えてくれたこと、しかも理由まで教えてくれたことに、心から感動いたしました。
支援の中で改めて学んだこと
行動には、その子なりの理由や意味があります。
だからこそ、その行動だけを見るのではなく、背景にある気持ちを理解し、より適切な形で伝えられるよう支援していくことの大切さを、改めて感じた出来事でした。






