トイレトレーニング再開とドライパンツチェック
ABAセラピーを開始して1か月ほど経った頃、そのお子さんのトイレトレーニングを再開しました。まずは「ドライパンツチェック」から始めます。
30分ごとにオムツを確認し、濡れた時間を記録してデータを取ります。水分は、お子さんが好きなタイミングで自由に取ってもらいました。
水分をあまり取らなかった日は、セラピー3時間のあいだ一度も濡れないこともありましたが、よく飲んでいた日は、1時間に1回ほどオムツが濡れていました。
トイレへの促しと強化し探し
水分はこれまでと変わらず、お子さんの好きなタイミングで飲んでいただきました。そのうえで、1時間に1回、トイレに行くよう促す介入を行いました。
また、ドライパンツチェックと並行して進めていたのは、トイレの「強化し探し」です。そのお子さんは、ランダムな要素によって行動が変わりやすいタイプだったため、「なにが出てくるかお楽しみ」のガチャガチャを強化しとして設定しました。
トイレトレーニングのターゲット設定
ドライパンツチェックと強化し探しの準備が整ったところで、いよいよトイレに誘います。最初のターゲットは、「オムツが濡れていても、トイレで一滴でも排尿ができたら強化」です。
この目標が達成できたら、次の段階へ進みます。「オムツが濡れていない状態でトイレで一滴でも排尿できたら強化」、さらにその次は「オムツが濡れていない状態で10秒ほど排尿(すべて出し切る)できたら強化」というように、少しずつ目標を上げていきます。
はじめの挑戦とお子さんの反応
対セラピストで行うABAセラピー時間内での最初のトイレトレーニングでは、事前にご家族へお伝えしていたときと同じように、お子さんにも明確に「オムツが濡れていても、トイレで少しでもおしっこができたらガチャガチャを回そうね」と伝えました。
初回の結果は、音声で指示を出すと、お子さんが言葉で「行かない」と回避し、トイレに行くことを強く拒否する行動が見られました。
その日も普段通り、好きなタイミングで水分を取っていただきましたが、セラピー開始時にオムツを交換してから終了まで濡れることがなく、本当におしっこが出なかったのだと思われます。
ルールを理解し守るお子さんの姿
そのお子さんがとても素敵だったのは、ガチャガチャを楽しみにして「ほしい!」と言っていたのですが、決して勝手に取るようなことはありませんでした。
お話をしっかり理解されていて、「おしっこをしないとガチャガチャはできない」とわかっていたからです。
セラピーから家庭への般化(はんか)
トイレトレーニングは、まずABAセラピーの時間内で、セラピストと一対一で行います。マスターできた段階で、般化練習としてご家族と一緒に取り組んでいただきます。
この時点では、本来ご家庭での実践はまだ行いません。ただし、以前トイレに行けていた経験があり、とても理解力の高いお子さんでしたので、もしお子さんのほうから「トイレに行きたい」と言った場合には、そのまま行ってもらうようにしました。
そして、もしトイレでオムツが濡れていても、少しでも排尿できた場合にはしっかり強化をしてあげてくださいとお伝えしていました。
ただし、ご家族からは《絶対に》トイレに行くよう指示を出さないようお願いしました。
ご家族との連携による成功
その次のトイレトレーニングでは、なんとお子さんのほうから「トイレに行く」と言い、すでにオムツが濡れていない状態で排尿することができていました。
ABAセラピストの介入を一語一句違えずに守り、「音声で指示を出さない」という対応を徹底してくださったご家族のご協力の賜物です。
本当にご協力ありがとうございました。
約1ヶ月半後の成果
約1か月半後には、なんと排便までトイレでできるようになりました。かつて強い回避があったとは思えないほど、驚くほどの速さで排便まで習得されたお子さんのケースでした。