ASDのある子どもは冬にどう変わる?寒さで起きやすい行動とサポート方法【専門家解説】

ASDのある子どもは冬にどう変わる?寒さで起きやすい行動とサポート方法【専門家解説】

こんにちは。チルドレン・センターです。ついに師走になりました。冬は楽しい行事が増える一方で、寒さや生活リズムの変化により、子どもたちの行動や気分に変化が見られることがあります。

特に ASD(自閉スペクトラム症)のあるお子さまは、寒さや乾燥、冬特有の環境の変化によって、日常の行動や生活リズムが影響を受けやすいと言われています。

ABAでは、「今日は調子がいい」「今日は調子が悪い」といったあいまいな説明は行いません。行動は必ず環境との相互作用の中で起こるものと考えます。
寒さや乾燥といった季節的な変化も、子どもにとっては重要な環境要因のひとつです。

今回のブログでは、冬に起きやすい行動の特徴とともに、環境要因を少しでも調整するために、今日からできる具体的なサポートについて、専門家の視点からご説明していきます。

目次

1.冬に見られやすい行動の変化

1-1.朝の支度・登校の負担が増えるような気がする

外が寒いと、家を出るまでの行動が遅くなる、着替えに時間がかかる、などがよく見られます。でもこれは、ASD特有ということでないのです。しかし保護者からすれば、「季節性」なのかしら、と思うこともあると思います。
ASDのあるお子さまは、「温度変化」や「衣服の感覚」に敏感なことも多く、冬は特に負担が大きくなります。

1-2.触覚・感覚の過敏・鈍麻が表れやすい

寒いと、着るもの、羽織るもの、つけるもの、が自然と多くなります。よく「感覚過敏がある」ため、服などの選択が難しいといわれています(実際、これまでの個人的な経験ですと、純粋に感覚過敏のクライアントは、数はそんなにはありませんが)

  • 手が冷たい → 手袋を嫌がる
  • 靴下・タイツの感覚が苦手
  • 寒くても上着を嫌がる
  • 逆に、ずっと手をポケットに入れて動かない

感覚の特性が強い子ほど、冬服は「不快な刺激」になりやすいです。

1-3.風邪や乾燥で、行動が安定しにくい

鼻づまりや乾燥は、ASDのお子さまにとって大きなストレス。不快感が原因で

  • かんしゃく
  • 指しゃぶり・口に入れる行動(oral sensory)
  • ソワソワする

などが増えることがあります。

1-4.学校でのトラブルが増えることも


冬は活動が室内中心になるため、ざわざわとした音が余計に気になる、においが気になる、などの行動も起こりがちです。

2.今日からできる ABA 視点のサポート

2-1.行動を見える化する

冬の朝のルーティンをチェック表で視覚化します。

例:上着→手袋→靴→カバン

「寒いから嫌」より、「何をしたら終わるか」が明確になり、行動がスムーズになります。

2-2.冬の服を選択肢にする

あえて選択しを与えることで、行動が安定しやすいです。

  • 手袋A/B/つけなくて良いが、手をポケットに入れる
  • 上着の素材が違うものを試す
  • ネックウォーマー vs マフラー

選択肢を提示すると協力度が高まります。

2-3.感覚面の調整

  • 冬服は「タグを切る」「内側が柔らかい素材」を選ぶ
  • 手袋が苦手なら「ポケットにカイロ」
  • 乾燥が強い日は「加湿」「こまめに水分補給」

感覚刺激の調整は行動の安定につながります。

2-4.小さなウォームアップ習慣を作る

外に出る前に

  • 10回ジャンプ
  • 軽くストレッチ
  • 深呼吸

など、身体を温める習慣が効果的です。

2-5.言語化練習

保護者の方が「冬は何となく大変だな」と感じやすくなる要因の一つに、発達障害のある子どもたちのコミュニケーションの難しさがあります。

たとえば、「さむいね」「(セーターが)チクチクする」「(外へ)行きたくない」といった要求や気持ちを言葉で伝えられるだけでも、行動として大きく表れることを防ぎやすくなります。

ただし、だからといって、不快な場面をあえて与えて練習する必要はありません。ABAでは、子どもが安心できる環境の中で、無理のない形でコミュニケーションを育てていくことを大切にしています。

3. チルドレン・センターでは、冬の行動相談を受け付けています

チルドレン・センターでは、冬の時期に増えやすい感覚過敏朝の支度の困難学校生活における行動の変化
そしてかんしゃくや不安の増加といったご相談に対して、ABA(応用行動分析)に基づいた実践的なサポートを行っています。

オンライン相談も可能です。お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

松田 幸都枝(まつだ こずえ) 松田 幸都枝
(まつだ こずえ)
チルドレン・センター 代表取締役

認定行動分析士 (博士)(BCBA-D®)
米国ニューヨーク州 行動分析士
Pepperdine大学大学院 准教授


豪州シドニー大学教育学部初等科、特別支援学部卒業後、豪州、イギリス、オランダなどで特別支援および普通学級などで勤務。米国の大学院にて、博士(応用行動分析学)課程を修了。2008年、株式会社チルドレン・センターを設立。全従業員 国際資格保有。チルドレン・センターのスタッフとともに、日本、米国、およびアジア諸国にて、家庭や学校内でのABA指導およびスーパービジョンを務める。2016年より大田区の特別支援アドバイザー就任。2020年よりペッパーダイン大学大学院 心理学部の准教授として指導。著書に「小児科医に知ってほしい応用行動分析学(ABA)について」(小児内科/ 東京医学社) 、Culturally Tailored ABA: Treatments for Asian American Clients and Families. Multiculturalism and Diversity in Applied Behavior Analysis. Bridging Theory and Application (Routledge社) など。

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ご家庭でもできることがあればという視点からお話しさせて頂きます。

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