言語の練習において、まずはABAセラピストの音声を聞き、その音声を真似ることから始めます。
セラピストの音声を模倣し、それによってお子さんが「強化される」経験を積み重ねることで、言語を使ったコミュニケーションの成功体験を増やしていきます。
要求言語(MAND)
お子さんが車をみている
セラピスト:「車ちょうだい」と言う
お子さん:「車ちょうだい」と言う
セラピストが「どうぞ」と言い、お子さんに車を渡す 。この流れで「欲しいものを言葉で伝えると手に入る」という成功体験を育てます。
表出言語(TACT)
おもちゃの救急車の音「ピーポーピーポー」が聞こえる
セラピスト:「救急車!」と言う
お子さん:「救急車!」と言う
セラピストがお子さんを強化(お子さんの強化しは救急車だったので救急車を渡す)する。物の名前や音など、周囲のものに言葉を結びつける力を養います。
会話(IV)
お家のおもちゃで遊んでいる
セラピスト:「座るの何?いす」と言う
お子さん:「いす」と言う
セラピストが「正解!」と言い、お子さんに椅子のおもちゃを渡す 。やり取りを通じて、質問に答える力や会話のキャッチボールを身につけていきます。
あるお子さんのケースでは、セラピストの音声模倣を通じて「良いことが起きる」時間が増え、3か月後には自然な環境でも、言語を使ったり、指示に反応したり、適切に遊んだりと、行動が大きく変化してきました。
ある日の出来事です。
お子さんがアンパンマンのミキサーのおもちゃで遊んでいて、フルーツの具材をミキサーに入れた時のこと。
ミキサーのアンパンマンが「バナナ!」と言った後、お子さんがセラピストの目を見て、ニコニコしながらこう言ってくれました。
「いいねぇ!」
私たちは、普段お子さんが適切な行動をした際に「上手!」「いいね!」「すばらしい!」などの言葉を使っていたとおもいます。ですが、その日、セラピストは「いいねぇ!」という言葉は使っていませんでした。
「ちょうだい」「あそぼう」という要求言語(MAND)や「赤」「ぶどう」など表出言語(TACT)が増えてきたのは分かっていましたが、まさか、お子さんから自発的に「いいねぇ!」という言葉が出るとは思っておらず、私たちは驚きと感動でいっぱいになりました。
おわりに
音声模倣を通して「言葉を使うって楽しい!」「伝えるってうれしい!」という経験を重ねることで、子どもたちは少しずつ、自分の気持ちや考えを表現する力を伸ばしていきます。
これからも一つひとつの「できた!」を大切に、寄り添っていきたいと思います。