チルドレン・センター

ABA(応用行動分析学)で自閉症を療育

発達障害とその定義について(ABAの観点から)

発達障害とその定義について(ABAの観点から)

「うちの子は、発達障害なのでしょうか?」など、ご相談をいただくことがあります。今回は「発達障害とその定義」についてお伝えしていこうと思います。

私たちチルドレン・センターは、これまで1000人以上の子どもたちを指導してきた知識と経験があります。(2024年現在)指導者は、ABA(応用行動分析学)の国際資格の協会認定行動分析士-博士®(BCBA-D®)、協会認定行動分析士®(BCBA®)、協会認定準行動分析士®(BCaBA®)、そして登録行動テクニシャン®(RBT®)を保有しております。​

発達障害とは

「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」(発達障害者支援法 第二条 第一項)という定義になります。

日本国内の法(上記)、政令、省令、そして医師が診断の際に使用する診断基準ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)などでも、少しづつ定義が異なります。

しかし「発達障害」というのは「自閉症スペクトラム症」「学習障害」「注意欠陥多動性障害」のいずれかひとつ、またはそれぞれが重複する場合を指します。

また「発達障害」は英語では、「Developmental disorder」と訳す場合が多いようですが、その英語は英語圏でもその解釈が異なります。

例えば、アメリカ合衆国の医師、専門家の場合、「発達障害」は、「Developmental disabilities」という言葉に訳します。しかし実際は、明白な診断名がない場合にのみに使用されることがほとんどです。他の病名、つまり自閉症スペクトラム症(ASD)などがある場合は、そちらを診断として使います。日本語でいう広い意味での「発達障害」という言葉をあまり使用しません。

それでは発達障害の構成となっている3つの診断名に関して診断基準(DSM-5)「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 第5版」(米国精神医学会 発行)を元に説明をします。

自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害とは

現在は、診断基準(DSM-5)では、自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害も、すべて「自閉スペクトラム症(ASD:Autism spectrum disorder)という診断名の中に含まれます。

1. 社会的-情動的相互性の障害

例えば、異常な社会的接近や、通常の双方向的な会話ができないこと、興味や感情、感覚を共有することが減少していること、または社会的相互作用を開始したり応答したりすることができない場合が挙げられます。

2. 社会的相互作用のために用いられる非言語的コミュニケーション行動の障害

例えば、言語的および非言語的コミュニケーションがうまく統合されていないこと、視線やボディーランゲージの異常、ジェスチャーの理解や使用の欠如、または表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠如が挙げられます。

3. 関係を発展させる、維持する、理解することの障害

例えば、さまざまな社会的文脈に合わせて行動を調整するのが難しいこと、想像的な遊びを共有することや友達を作るのが困難であること、または他者に対する興味が完全に欠如している場合が挙げられます。

これは、診断基準(DSM-5)の自閉スペクトラム症(ASD)診断基準の一部であり、自閉スペクトラム症(ASD)の特性を評価する重要なポイントとなっています。

学習障害(特異的学習障害)とは

学習障害とは、DSM-5では、特異的学習障害(Specific Learning Disorder, SLD)と区分されます。学業スキルの習得および使用における困難が、少なくとも6ヶ月以上にわたり持続し、介入を行っても改善が見られないこと。

単語の正確な読み取りが不正確である、または遅い、努力を伴う

例: 単語を正しく発音できない、読み飛ばしや置き換えが頻繁に起こる

読解力が低い(意味を理解できない)

例: 読んだ内容を理解し、結び付けるのが難しい

書字表現の困難(文法、句読法の誤り、アイデアの明確な表現ができない)

例: 文法的誤りが多い、文章が論理的でない

数字概念、数値の事実、または計算における困難

例: 数字の理解や計算の正確性が不足している

数学的推論の困難(数学の問題を解決する能力の欠如)

例: 数学の手順を正しく使えない

診断の特異性

特異的学習障害は、以下の分野での困難の組み合わせによって細分化されます。

  • 読字障害(Dyslexia):主に読み取りや読解力の困難。
  • 算数障害(Dyscalculia):主に数や数学的推論の困難。
  • 書字表現障害(Disorder of Written Expression):主に書字や文法的表現の困難。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは

注意力の欠如および、または多動性−衝動性の持続的なパターンを特徴とする神経発達障害であり、その結果、日常生活の機能や発達に支障をきたします。診断は以下のAからEの基準に基づいて行われます。

A. 日常生活の機能や発達に支障をきたす、注意力の欠如および、または多動性−衝動性の持続的なパターンが、以下の(1)および、または(2)によって示されます。

(1)注意力の欠如(Inattention)
以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が、発達段階に見合わない程度で、6か月以上持続し、社会的、学業的、または職業的な活動に悪影響を与えている:

  • 細部への注意を払うことができず、不注意なミスを頻繁にする(例:学業、仕事、またはその他の活動において)。
  • 課題や遊びの活動において注意を持続することが難しい。
  • 直接話しかけられているのに、聞いていないように見える。
  • 指示に従わず、学業、家事、職場での業務を完了できない。
  • 課題や活動を整理することが難しい。
  • 継続的な精神的努力を要する課題(例:宿題やレポート)を避けたり、嫌がったり、やりたがらない。
  • 必要な物(例:文房具、手帳、教材)を頻繁に紛失する。
  • 外部からの刺激に簡単に気を取られる。
  • 日常の活動を忘れることが多い。

(2)多動性および衝動性(Hyperactivity and Impulsivity)
以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が、発達段階に見合わない程度で、6か月以上持続し、社会的、学業的、または職業的な活動に悪影響を与えている

  • 座っている時に手や足をそわそわ動かしたり、もじもじする。
  • 座っているべき場面で席を離れる。
  • 不適切な状況で走り回ったり、よじ登ったりする。
  • 静かに遊んだり、余暇活動をすることが難しい。
  • 常に動いているように見えたり、「エンジンで動いているようだ」と形容される。
  • 話しすぎる。
  • 質問が終わる前に答えを急いで言ってしまう。
  • 順番を待つのが難しい。
  • 他人の会話やゲームに割り込む。

B. 不注意や多動性-衝動性のいくつかの症状が、12歳以前に存在している。

C. 症状が、家庭、学校、職場、友人や親戚との関係など、2つ以上の状況で存在する。

D. 症状が、社会的、学業的、または職業的な機能に明らかに支障をきたしていることが証明されている。

E. 症状が統合失調症や他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安障害、解離性障害、人格障害、薬物中毒または離脱)によってより適切に説明されるものではない。

発達障害の疑いがある場合、どうすればいいのか

認定行動分析士としては、できるだけ早く医師の診断を受けるべきだと思います。少し以前であれば「経過観察」「保護者の考えすぎ」「お母さん、大丈夫、大丈夫」ということばで療育まで数年かかってしまったケースもありました。最近は日本国内でも「早期発見、早期介入」の重要性を保護者やご本人に伝える医師も増えてきた印象です。住んでいる地域、国によって対応も異なるかもしれませんが、発見から介入までの期間が短ければ短いほどよりよい治療を受けることができるという研究も出ています。
発達障害の心配や疑いがある場合には、医師による診断を速やかに受けることをおすすめしています。

まとめ

今回は「発達障害とそのの定義」についてお話しさせていただきました。発達障害は「こういった症状がある!」というような明確なものがありませんし、気になる症状があったとしても発達障害とは言えない場合もあります。お子さんの症状に心配なことがあれば、ぜひ医師の診断を受けてみることをチルドレン・センターではおすすめしております。

私たちチルドレン・センターは随時ご相談をお受けしております。お気軽にご相談・お問い合わせください。

この記事を書いた人

profile

松田 幸都枝(まつだ こずえ)

認定行動分析士 (博士)(BCBA-D®)​
米国ニューヨーク州 行動分析士
チルドレン・センター 代表取締役
Pepperdine大学大学院 准教授

豪州シドニー大学教育学部初等科、特別支援学部卒業後、豪州、イギリス、オランダなどで特別支援および普通学級などで勤務。米国の大学院にて、博士(応用行動分析学)課程を修了。2008年、株式会社チルドレン・センターを設立。全従業員 国際資格保有。チルドレン・センターのスタッフとともに、日本、米国、およびアジア諸国にて、家庭や学校内でのABA指導およびスーパービジョンを務める。2016年より大田区の特別支援アドバイザー就任。2020年よりペッパーダイン大学大学院 心理学部の准教授として指導。著書に「小児科医に知ってほしい応用行動分析学(ABA)について」(小児内科/ 東京医学社)
、Culturally Tailored ABA: Treatments for Asian American Clients and Families. Multiculturalism and Diversity in Applied Behavior Analysis. Bridging Theory and Application (Routledge社) などがある。

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