チルドレン・センター

ABA(応用行動分析学)で自閉症を療育

自閉スペクトラム症(ASD)の定義と特徴(ABAの観点から)

自閉スペクトラム症(ASD)の定義と特徴(ABAの観点から)

保護者から「うちの子は自閉症だと思う」とご相談を受けたり、学校の職員から「あの子ってアスペルガーですよね」といった質問を受けることがあります。

今回は、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)の定義と特徴について説明します。また、応用行動分析学(ABA)による指導でどのような変化が見られるのか、その例を挙げながら、行動の改善を通じてお子さんの選択肢を広げる可能性についてお話しします。

私たちチルドレン・センターは、これまで1000人以上の子どもたちを指導してきた知識と経験があります。(2024年現在)指導者は、ABA(応用行動分析学)の国際資格の協会認定行動分析士-博士®(BCBA-D®)、協会認定行動分析士®(BCBA®)、協会認定準行動分析士®(BCaBA®)、そして登録行動テクニシャン®(RBT®)を保有しております。​

自閉スペクトラム症(ASD)とは?

自閉スペクトラム症(ASD)は、他者との相互作用、コミュニケーション、学習、行動に影響を与える神経発達障害です。ASDはどの年齢でも診断される可能性がありますが、一般的には生後2年以内に症状が現れることが多いです。
ASDは性別、人種、民族、経済的背景に関係なく発生し、幼少期から見られる特徴的な行動をもとに診断されることが一般的です。ASDは生涯にわたる障害であることが多いものの、適切な治療や支援サービスにより、症状や日常生活の機能を改善することができます。
アメリカ小児科学会は、すべての子どもに対して自閉症のスクリーニングを受けることを推奨しています。保護者の方は、お子さんの医療提供者にASDのスクリーニングや評価について相談することをお勧めします。

注意:日本では、診断は医師が行います。医師が診断を行います。診断については、必ず専門医にご相談ください。ABAの専門家や心理士であっても、日本ではASDの診断を行うことはできません。

自閉スペクトラム症(ASD)の特徴

アメリカ精神医学会が作成した「精神疾患の診断と統計マニュアル(DSM-5)」によればよると、ASDの特徴として以下が挙げられます。

  • 他者とのコミュニケーションや相互作用が困難
  • 興味の範囲が狭い
  • 反復行動
  • 変化への適応が困難
  • 学校、仕事、その他の生活の場面における機能への影響
  • 感覚過敏または感覚鈍麻

ASDが「スペクトラム」障害と呼ばれる理由は、症状の種類や重症度が人によって大きく異なるためです。上記の特徴が全て該当する場合もあれば、一部のみが見られる場合もあります。しかし、適切な治療や支援により、社会で活躍している方は多数いらっしゃいます。

応用行動分析学(ABA)による行動改善の例

保護者の方がインターネットで自閉症スペクトラム症(ASD)について検索し、将来への不安を感じている場合も多いでしょう。応用行動分析学(ABA)は、ASDの方への治療法として知られていますが、実際にはもっと幅広い意味での科学です。
医学的には「症状の改善」という表現が適切かもしれませんが、ここでは「行動の改善」として例を挙げます。ABAの目的は、ASDの方を「変える」ことではなく、社会的な環境の中で「気になる行動」を改善し、本人の社会的妥当性を高めることにあります。ABAでは、個人の良い部分を伸ばし、課題となる行動を重点的にプログラム化して支援します。
以下に、具体的なASDの特徴とABA指導による変化の例を紹介します。

他者とのコミュニケーションや相互作用が困難な事例

K君(5歳)の場合

Kくんは3歳直前にABAを始めました。当時は言語によるコミュニケーションができず、他害行動も多く見受けられました。ABA開始時は特に要求言語(ABAでは「マンド」と呼ばれます)を集中的に練習しました。その結果、就学前には保護者と年齢相応の会話ができるようになりました。

Oさん(12歳)の場合

Oさんは年長のときにセンターに来所しました。当時は言語の遅れがあり、音声によるコミュニケーションが困難で、集団指導中に「泣く」などの問題行動も目立っていました。まずPECSカード®を使ったコミュニケーション(「絵カード交換式コミュニケーション」と呼ばれます)の確立を進め、その後文字の導入を行いました。小学2年生ごろには書字によるスムーズなコミュニケーションが可能となり、学習面でも大きく成長しました。その後、小学校高学年になると音声コミュニケーションも向上し、日常会話が可能になりました。

感覚の過敏または感覚鈍麻の事例

T君の場合

外国出身のTくんは、以前からABAを受けていたものの、激しいかんしゃくが続いていました。保護者は「タイムアウト※1」を試していましたが、効果が見られませんでした。センターでは、まず問題行動を減らす指導を中心に行い、もともと持っていた会話スキルの向上をあげました。しかし、真冬でも半袖を着続けるなど感覚過敏が問題となっていました。ABAの「シェイピング※2」を用いて、少しずつ服を着ることに慣らしていきました。その結果、最終的にはジャンパーを着て外で遊ぶことができるようになりました。

※1 タイムアウトは、望ましくない行動が起こった際に、一時的に注意を引くものから離れさせる方法のことです。
※2 シェイピングは、行動形成ともいいます。最終目的の行動に達成するために、次々と小さな目標を立てて最終目標に近づけていきます。その都度の目標に対して強化をする過程のことです。

まとめ

今回は「自閉スペクトラム症(ASD)の定義と特徴」についてお話しさせていただきました。ASDの方には特徴がありますが、全てを改善する必要はありません。生活や社会生活に支障をきたす部分を少し改善することで、ご本人が得をすることを目標にABAを活用することが可能です。不安や心配なことがあれば私たちチルドレン・センターにご相談ください。

私たちチルドレン・センターは随時ご相談をお受けしております。お気軽にご相談・お問い合わせください。

この記事を書いた人

profile

松田 幸都枝(まつだ こずえ)

認定行動分析士 (博士)(BCBA-D®)​
米国ニューヨーク州 行動分析士
チルドレン・センター 代表取締役
Pepperdine大学大学院 准教授

豪州シドニー大学教育学部初等科、特別支援学部卒業後、豪州、イギリス、オランダなどで特別支援および普通学級などで勤務。米国の大学院にて、博士(応用行動分析学)課程を修了。2008年、株式会社チルドレン・センターを設立。全従業員 国際資格保有。チルドレン・センターのスタッフとともに、日本、米国、およびアジア諸国にて、家庭や学校内でのABA指導およびスーパービジョンを務める。2016年より大田区の特別支援アドバイザー就任。2020年よりペッパーダイン大学大学院 心理学部の准教授として指導。著書に「小児科医に知ってほしい応用行動分析学(ABA)について」(小児内科/ 東京医学社)
、Culturally Tailored ABA: Treatments for Asian American Clients and Families. Multiculturalism and Diversity in Applied Behavior Analysis. Bridging Theory and Application (Routledge社) などがある。

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