チルドレン・センター

ABA(応用行動分析学)で自閉症を療育

子どもが叩いてしまう理由と対策

子どもが叩いてしまう理由と対策

普段からさまざまな環境の保護者の方やお子さんと接しているなかで、幼少期のお子さんをもつ保護者の方から、

「うちのこが、私を叩くんです」「よく妹を叩きます」「園で、他の子どもを叩くらしいです」「学校で、低学年を叩くと呼び出されました」「うちの子、他害があるんです」

などのご相談を受けることがあります。

もっと叩くようになってしまって「怪我をさせたらどうしよう・・・」と、不安になるのは当然だと思います。

今回は、「子どもが、人を叩く」について考えられる可能性と対策について述べていきます。

私たちは指導者全員がABAの国際資格を持ち、確かな知識と豊かな経験で、これまで1000人以上の子どもを指導してきた実績があります。(2020年現在)

保有資格は、協会認定行動分析士-博士®(BCBA-D®)協会認定行動分析士®(BCBA®)協会認定準行動分析士® (BCaBA®)、そして登録行動テクニシャン®(RBT®)です。​

叩いてしまう原因は、しつけ?愛情不足?

園や学校で、「お子さんが先生や他のお友達を叩いて困っています!」と面談で言われてしまった、毎日電話がくるとお困りの保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。 

では、なぜ先生は連絡してくるのでしょうか?

先生の思いとしては、「家でしつけてください」「叱ってやめさせてください」という意味で連絡をしてきます。

実際はちゃんと子どもとコミュニケーションを取っているのにも関わらず、ベテランの先生になると思わず「お家でかまってあげてくださいね」「時間を取ってあげてくださいね」「愛情をかけてくださいね」のようなコメントも思わず口からでてしまうかもしれません。

先生がおっしゃるように、お家で叱ったり、ちょっと時間を取るように心がけるだけで、人を叩くことが減る子どももいるかもしれません。

問題は、叱っても改善しないとき、どうしているのか?です。

子どもが人を叩く理由(ABAからの推測)

子ども(人)の行動はとても複雑で様々な原因がありますが、ABAでは、環境に原因があると検討します。

しつけのせいでも、愛情不足のせいでもないのですが、良かれと思ってやっていることが、「叩く」ことを増やしてしまう可能性があります。

ABAでは、行動を分析する場合には、きちんとデータを取り、予測し、介入したことがあっているかどうか確認をします。

状況が似ていても個人で大きく違いますので、下記はあくまで一例です。そのまま実施することは推奨しておりませんが、まわりの状況を見て十分にお子さんの安全を優先しながら参考にしてみてください。

保護者Aさんの場合

真面目で優しい保護者Aさんは、こまめにお子さんを褒めています。

アバター
保護者Aさん
「毎日、『ちゃんといい子だねー』と声をかけているけど、妹を叩くことをやめません。これ以上叩くことが増えたら困るので、毎日夫婦で徹底的に叱っています。」

保護者Aさんに、2歳の妹さんを叩いた前後の聞き取りをしました。


その日、保護者Aさんは洗濯物をたたんでいました。(保護者Aさんは、基本的に一日中仕事と家事で忙しい)

するといきなり、隣の部屋で「ぎゃー!」と妹さんの声が聞こえて、保護者Aさんが駆け付けると、妹さんがひっくり返っていました。お兄ちゃんは保護者Aさんの顔をみて、ニヤニヤしている。 

保護者Aさんはお兄ちゃんの手をとって「叩いちゃダメでしょ!」と言って、本人の手をギュッと握るとお兄ちゃんはまた終始ニヤニヤしている。


このようなことが数回繰り返されていました。

ABAの観点からの保護者Aさんへのご提案

保護者Aさんは真面目で素晴らしいお母さまですが、お子さんの「叩く行動」が減っていませんでした。

この情報から分かることは、「妹さんを叩く」→「お母さんが飛んでくる」という図式です。

まず、お子さん(お兄ちゃん)が

  • ① 「ママきて!」など気持ちを伝えるスキルがあるのか
  • ② 年齢相応な遊びのスキルがあるのか 

をABAでは検討します。

そして、できるだけ保護者Aさんは、妹さんのそばにいる環境をつくり、お子さん(お兄ちゃん)に一切の注意をしないようにします。

家事をしているとき、お子さん(お兄ちゃん)が叩いてなければ、どんどん声をかけてあげます。「楽しそうだね!」「飛行機で遊んでるんだね!」など。

本人がそれに返事をする必要はありません。「適切な場面」で「適切な関心が引けている」環境をつくるのです。

それでも万が一、妹さんを叩いてしまったら、即時に妹さんを抱っこして、さらっとさります。その時、お子さん(お兄ちゃん)を一切叱りません。

これらを実践することで、ABAの観点から「叩く」という行動を減らしていきます。

【まとめ】

今回は、ABAの観点から「子どもが人を叩く理由」「子どもが人を叩かないようにする対策」についてご説明してきました。

ABAでは人を叩いてしまう基本的な理由は、

  • ABAでは、環境に原因があると検討します。
  • しつけのせいでも、愛情不足のせいでもない

と考えます。

そして、「叱る」ということで、叩くことを抑制するのではなく「適切な場面」で「適切な関心が引けている」環境をつくるということが最も大切だと考えています。

また、ABAでは、きちんとデータを取り介入の予測を立てるため、お子さんの環境や状況によって叩くことを改善するために予測される介入の方法も変わってきます。

子どもが叩いてしまうことへの対処方法がわからなかったり、悩まれてることがあれば、私たちチルドレンセンターは、随時ご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

profile

松田 幸都枝(まつだ こずえ)

認定行動分析士 (博士)(BCBA-D®)​
米国ニューヨーク州 行動分析士
チルドレン・センター 代表取締役
Pepperdine大学大学院 准教授

豪州シドニー大学教育学部初等科、特別支援学部卒業後、豪州、イギリス、オランダなどで特別支援および普通学級などで勤務。米国の大学院にて、博士(応用行動分析学)課程を修了。2008年、株式会社チルドレン・センターを設立。全従業員 国際資格保有。チルドレン・センターのスタッフとともに、日本、米国、およびアジア諸国にて、家庭や学校内でのABA指導およびスーパービジョンを務める。2016年より大田区の特別支援アドバイザー就任。2020年よりペッパーダイン大学大学院 心理学部の准教授として指導。著書に「小児科医に知ってほしい応用行動分析学(ABA)について」(小児内科/ 東京医学社)
、Culturally Tailored ABA: Treatments for Asian American Clients and Families. Multiculturalism and Diversity in Applied Behavior Analysis. Bridging Theory and Application (Routledge社) などがある。

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