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ABA(応用行動分析学)で自閉症を療育

子どもの「癇癪(かんしゃく)」で困っている・ひどい

子どもの「癇癪(かんしゃく)」で困っている・ひどい

一般的に、癇癪(かんしゃく)とは感情をコントロールすることができず、「怒り」「不満」「イライラ」「欲求不満」など、感情をありのままに示す行動を指します。

私たちABAの国際資格を持っている指導者は、その癇癪(かんしゃく)を問題行動としてとらえ、アセスメントをとり、介入を決定します。

ここでは、癇癪(かんしゃく)に関して、ABAからみた改善に対する考え方をご説明します。 

ABA(応用行動分析)とは教育、スポーツ、企業コンサルティング、リハビリ、老年学などに幅広く活用されており、とりわけ自閉症児や発達しょうがい患者の問題行動を改善するのに用いられる考え方とアプローチ方法です。

我々はそのABAの専門家であり、確かな知識と豊かな経験で、これまで1000人以上の子どもを指導してきた実績があります。(2020年現在)

子どもの「癇癪(かんしゃく)」について

一般的な癇癪(かんしゃく)の特徴については個人差があり、「怒り」「不満」「イライラ」「欲求不満」など、感情をありのままを示すことが多く、泣き叫んだり、暴れたり、地面を転がったり、物を投げて壊したりと周りにあたったりしてしまうことがあります。行動を制御することがむずかしく、癇癪(かんしゃく)がすぐに収まらずに長時間にわたることもあります。

医学では、「癇癪(かんしゃく)」は次のように説明をしています。

  • 癇癪は不快で破壊的な行動や感情の爆発。それらは多くの場合、満たされていないニーズや欲求に応じて発生する。
  • 癇癪は、欲求不満のときに自分の欲求を表現したり感情をコントロールしたりできない幼い子供やその他の子供たちに発生する可能性が高くなる。

ABAの観点から「癇癪(かんしゃく)」の考え方について

ABAでは、一般的にいわれている癇癪(かんしゃく)を「感情の爆発」とはとらえません。

「どんな行動を指すのか」「いつ、どこで、どれぐらいの時間、なにがおきて、何をしたら止まったのか」を聞かないかぎり、一切の「分析」の糸口がみえません。

ABAの観点から「癇癪(かんしゃく)」の介入について

ABAの専門家による査定を受けたことがある方はご存知だと思いますが、癇癪(かんしゃく)だと思われる事象について、細かく聞き取りを必要とし、さらにはそれらの詳細なデータをとっていただきます。(昔、日本人の学校の先生にそんなこときいてどうすんの!失礼だ!としかられたこともあるぐらいです(笑))

細かい聞き取りや、詳細なデータをとることは、決して「周囲にいる人の間違え」を指摘するわけではなく、ABAの専門家として癇癪(かんしゃく)とされる行動の機能を予測するのに必要だからです。

たとえば、教えている米国の大学院でBCBA®(協会認定行動分析士)を目指している大学院生が、「癇癪(かんしゃく)」という言葉で行動を定義してくると、再提出になります。(鬼ですね!)

もっと言えば、行動の定義をして、その行動のデータや記録をお願いしたり、現場にいくことができれば機能分析をして、機能の予測をたて、それに見合った「介入」計画をたてることが、ABAの専門家の仕事になります。

子どもの「癇癪(かんしゃく)」は問題行動とはかぎらない

子どもは感情の調整が未発達でコントロールや調整のスキルをまだ未発達な段階にあります。欲求不満やストレス、環境の変化などで、医学的な観点からの癇癪(かんしゃく)の状態になることもあるかと思いますが、ABA専門家は、「ストレスから「癇癪(かんしゃく)」をおこしています」とか、「今日はご機嫌がわるいですね」という言い方はしません。

なぜならば、行動は、環境の影響であると踏まえて介入を検討して立証していくからです。もちろん、体調不良や睡眠不足などの生理的現象の場合は除きます。そして、その環境や状況から「本当にこの行動にABAの介入をいれるべきなのだろうか」を周囲の方と、場合によっては当事者も踏まえて一緒に検討をすることが倫理コードで求められます。ABAは受ける本人の社会的妥当性を高めるものであるからです。

子どもの「癇癪(かんしゃく)」は自閉症だから?

自閉症の診断をうけているお子さんをもつ保護者や園や学校の先生方がご相談に来てくださる際に、「癇癪(かんしゃく)がありまして・・・」とご相談をしてくださる方は、実はそんなに多くはありません。

しかし実際のABAの査定や介入指導を開始すると、おや?おやおや!というほど、癇癪(かんしゃく)の行動があり、RBT®(登録行動テクニシャン)からすぐに報告があります。後に家庭ではどうなのかをお伺いすると、「実は癇癪(かんしゃく)が、毎日のようにありまして・・・」と教えてくださる方が多いです。

もしかすると「癇癪(かんしゃく)が多いと、指導してもらえないかもしれない」とお考えになる保護者もいるのではないかと考えるときもあります。また自閉症の診断を受ける前でも、癇癪(かんしゃく)が多かったら診断名がおりてしまうと不安な方も多いのかもしれません。

わたしたちABAの専門家は、癇癪(かんしゃく)でさえも、定義できる行動があったほうが、その行動に対してどうするのか、倫理や保護者や環境の選択肢と共に、そしてそのご本人も含めて、一緒に検討をすることができます。

自閉症だから癇癪(かんしゃく)があるのではなく、スキル(音声やその他のツールによるコミュニケーション)が少ない場合、癇癪(かんしゃく)を起こしたほうが、早く相手に通じてもらう手段なのです。そしてそれは、診断名の有無にかかわらず、スキルが少なかった際にどんな子供や大人にもおこりうることなのです。

「癇癪(かんしゃく)」が減らない

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保護者
こんなにがんばっているのに、癇癪(かんしゃく)がへらない
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保護者
いくら言っても、癇癪(かんしゃく)が減らない

そんな日が続くと、保護者は疲弊疲労します。

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保護者
マンションから苦情がきたらどうしよう
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保護者
虐待していると思われたらどうしよう

心配なあまりネットでやっと見つけた解決策が、「癇癪(かんしゃく)は、無視しましょう」で、がんばっているんだけど、毎日大変ですという方もいらっしゃいます。

ABAの専門家は、行動には機能(理由)があり、それをできる限り正確に分析をする機能分析ということを実施します。

人の行動の機能はとても複雑で、一言で簡単には改善できません。Aくんの癇癪(かんしゃく)への介入がBくんにそのまま利用できることは、ほとんどありません。

もし癇癪(かんしゃく)で、周囲の保護者や先生が困っていたり、不安になっている場合は、まず現在、良かれと思って実施していることを一度やめてみます。

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保護者
え、でも、こんなに頑張ってきたのに!
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保護者
いまの対応をやめたらもっと癇癪(かんしゃく)がふえてしまうかも
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保護者
園や学校で数十年の経験があるから、これで大丈夫なはず
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保護者
しつけがなっていないといわれるからやめられない・・・

など、様々な思いがあると思います。

しかし大事なことは、現時点で、これまでのやり方で癇癪(かんしゃく)が減っていないという事実なのです。

ABAの観点からの、保護者に実践してほしいこと

ひとりひとりの環境が違うので、「~すれば癇癪(かんしゃく)がおさまります!」という魔法はありませんが、ABAは科学的に対応することで、癇癪(かんしゃく)を軽減することができます。

もし今実施している対応で、癇癪(かんしゃく)が少しでも減っていないな、と思われる方は、下記の方法をまず実施してみることも検討してみてください。

1. 「記録」をとる

癇癪(かんしゃく)が起きたときに、「誰が」「何をする」のかです。

例えば、癇癪(かんしゃく)をおこすと、

  • 「20分後、本人」が「思い通りにする」にする。
  • 「祖父母」が「本人のいいなり」になる。

など、記録をとってみてください。ビデオもいいと思います。大事なのは、きっかけもですが、「誰が何をするのか」です。

2. 「癇癪(かんしゃく)を起こさないようにすること」を最優先

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保護者
癇癪(かんしゃく)を起こさないようにしたら甘やかしてしまう
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保護者
社会に出られなくなってしまう
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保護者
癇癪(かんしゃく)がどんどん増えてしまう

など、心配はあると思います。

しかし、癇癪(かんしゃく)によるコミュニケーションを成立させてしまう回数が増えれば増えるほど、癇癪(かんしゃく)の行動の軽減は、どんな機能であれ、複雑になります。

最新のABAの研究では、問題行動に特化した介入実践の際に、「もし、誰かが、癇癪(かんしゃく)を起こさせなかったら、100万円あげます」といったらどうしますか?という質問があります。

そのような質問があるほど、癇癪(かんしゃく)をたくさん起こしてしまうということは、その頻度も強度も増加してしまうということです。

「まず起こさせない」という考えが一番、本人にも周囲にも安全な方法です。

3. 「無視をする」対応をやみくもに信じない

ABAの専門家に「癇癪(かんしゃく)は無視しましょう」といわれたという方に、たまにお会いします。

無視をすることで「癇癪(かんしゃく)」が軽減しているのであれば、素晴らしいことです。

しかし、癇癪(かんしゃく)が減っていないのであれば、その「無視をする」対応が適していないことになります。

ABAでは、ひとつひとつの問題行動に関して、機能分析を実施します。ひとつの行動に、行動の機能が複数ある場合は、それぞれの機能にあわせて介入を立てます。

そしてデータを取りその行動が軽減しているのか、を確認します。

ABAの介入でいう無視とは、「計画的無視」といいますが、それは問題行動を起こしているお子さんや本人を無視するのではなく、その特定行動だけを無視するのです。もし無視をしているつもりでも、癇癪(かんしゃく)の行動が軽減していないのであれば、無視自体がその行動の機能にあっていないのかもしれません。

まとめ

いかがでしたか。ABAの観点から「癇癪(かんしゃく)」の解釈と改善についてにご説明してきました。

ABAでは癇癪(かんしゃく)を「感情の爆発」とはとらえず、癇癪(かんしゃく)と思われる事象については聞き取りや詳細なデータから予測をたて改善する「介入」計画をたて改善に導きます。

大事なことは、子どもが今までの方法で癇癪(かんしゃく)が減っているのか、いないのか把握することです。

子どもの癇癪(かんしゃく)に対処する方法がわからず、悩まれてることも多いと思います。私たちチルドレンセンターは、随時ご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせくださいね。

この記事を書いた人

profile

松田 幸都枝(まつだ こずえ)

認定行動分析士 (博士)(BCBA-D®)​
米国ニューヨーク州 行動分析士
チルドレン・センター 代表取締役
Pepperdine大学大学院 准教授

豪州シドニー大学教育学部初等科、特別支援学部卒業後、豪州、イギリス、オランダなどで特別支援および普通学級などで勤務。米国の大学院にて、博士(応用行動分析学)課程を修了。2008年、株式会社チルドレン・センターを設立。全従業員 国際資格保有。チルドレン・センターのスタッフとともに、日本、米国、およびアジア諸国にて、家庭や学校内でのABA指導およびスーパービジョンを務める。2016年より大田区の特別支援アドバイザー就任。2020年よりペッパーダイン大学大学院 心理学部の准教授として指導。著書に「小児科医に知ってほしい応用行動分析学(ABA)について」(小児内科/ 東京医学社)
、Culturally Tailored ABA: Treatments for Asian American Clients and Families. Multiculturalism and Diversity in Applied Behavior Analysis. Bridging Theory and Application (Routledge社) などがある。

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